
バラ「イヴ・ピアジェ (Yves Piaget)」は、その豪華な姿と豊かな香りから、世界中の愛好家を魅了し続けるモダンローズの傑作です。その起源、際立った特徴、そして名前に込められた物語について、詳しくご紹介します。
1. 誕生と起源:フランスが生んだ名花
系統:ハイブリッド・ティー(Hybrid Tea, HT)
イヴ・ピアジェは、現代バラの主流であるハイブリッド・ティー(HT)に分類されます。これは、四季咲き性で、太い茎の先に一輪または数輪の大輪花をつける特徴を持つ系統です。
育種家:マリー・ルイーズ・メイアン(Marie-Louise Meilland)
このバラを世に送り出したのは、フランスの世界的なバラ育種会社メイアン社です。実際の育種は、メイアン社の主要な育種家の一人であるマリー・ルイーズ・メイアンによって手掛けられました。
発表年:1983年
イヴ・ピアジェは、1983年にフランスで発表されました。この時期は、香りやロマンチックな雰囲気を重視したイングリッシュローズなどが台頭し始めた時代であり、その中でメイアン社は、香りとクラシックな花形を兼ね備えたモダンローズとして本種を発表しました。
2. 花の特徴と魅力
イヴ・ピアジェの最大の魅力は、その非凡な花形と香りに集約されます。
形状:ゴージャスなフリル咲き
- 花形: 非常に特徴的なディープカップ咲きから、大きく開くと花びらが複雑に波打つフリル咲き(またはシャクヤク咲き)になります。まるでドレスの裾やフリルのように波打つ花びらが、非常に豪華で立体的な印象を与えます。
- 花弁数: 花弁が極めて多く(約70〜80枚)、これが深いカップ状のフォルムと複雑なフリルを生み出しています。
- サイズ: 花径は非常に大きく、12〜14cmにも達する大輪です。
色彩:鮮やかで深みのあるピンク
- 花色: 鮮やかで濃厚なフューシャピンク(濃いめの赤紫色に近いピンク)です。この濃いピンク色が、フリルの陰影と相まって、より深みのあるリッチな色合いに見えます。
香り:強く甘美なダマスク香
- 香質: イヴ・ピアジェは、その強香で非常に有名です。香りの質は、オールドローズの特徴である**ダマスク・モダン(Damask Modern)**に分類されます。
- 特徴: 典型的なバラの甘い香りに加えて、シトラスやアニス、さらにはフルーツのような複雑でスパイシーなノートが感じられ、香りの持続性も高いです。この香りの強さから、切り花としても非常に人気が高く、プロのフローリストからも愛されています。
性質(樹木)
- 樹形: 半横張り性の木立性で、樹高は比較的コンパクト(約1.2m程度)に収まります。
- 花持ち: 大輪種としては花持ちが比較的良い方で、切り花にしてもその美しい姿を長く楽しむことができます。
- 四季咲き性: 繰り返しよく咲く四季咲き性が強く、春から秋まで断続的に開花を楽しめます。
3. 名前に秘められた物語
このバラの名前は、世界的に有名なスイスの高級ジュエリー・時計ブランド「ピアジェ(Piaget)」の当時のオーナー、イヴ・ピアジェ氏に捧げられたものです。
ジュエリーとバラの共通性
- 命名の背景: メイアン社とピアジェ家は親交があり、メイアン社はピアジェ氏の華麗なイメージ、そしてピアジェ社の手掛ける繊細で豪華なジュエリーのイメージを、このフリル咲きのバラの姿に重ね合わせました。
- 象徴: イヴ・ピアジェのバラは、まるで宝石を何層にも重ねたかのようなフリルの豪華さや、濃密な色彩と香りが、まさに**「身に着ける芸術」**である高級宝飾品の世界観を体現していると評価されました。
- プロモーション: ピアジェ社はこのバラをプロモーションに利用し、自社のイメージカラーや商品と組み合わせて紹介したこともあり、バラと高級ブランドという異色の組み合わせが話題を呼びました。
この命名の物語により、イヴ・ピアジェは単なる美しいバラとしてだけでなく、「ジュエリー・ローズ」という特別なアイデンティティを持つことになりました。
4. 評価と影響
イヴ・ピアジェは、発表以来、「ロマンティック・モダンローズ」の代表格の一つとして、ガーデニング愛好家だけでなく、フラワーアレンジメントの世界でも非常に高い地位を確立しています。
- 切り花人気: その強香と豪華な花形は、ブライダルブーケやハイエンドなギフトフラワーとして絶大な人気を誇ります。特に、イングリッシュローズにはないしっかりとした太い茎と花弁の硬さがあるため、切り花としての扱いやすさも評価されています。
- 受賞歴: その美しさと強香が評価され、国際的なコンクールで数々の賞を受賞しています。
イヴ・ピアジェは、オールドローズのような懐かしいロマンティックな雰囲気と、現代バラの持つ力強い樹勢と優れた香りを高次元で融合させた、フランスバラの伝統と革新を象徴する品種と言えるでしょう。


